*花嫁の衣裳*

22/24
前へ
/27ページ
次へ
「美崎さんもしかして、仕事が忙しいあまりに俺が交際を申し込んだこと忘れちゃった?」 胸がドクンと悲鳴をあげた。 膝の上の拳を固く、ぎゅっと握る。 「…ちゃんと、覚えています。二神さんこそ忘れて仕事に没頭しているものだと…」 「自分が言ったことを、こんな短期間で忘れたりしないよ」 二神さんはふっと笑った。 「仕事に没頭というより今は目の前のことに集中して欲しいから、あえて普段通りを心がけた。…正直もう少し、美崎さんの方は動揺すると思っていたけど」 「……動揺、してます。今も本音を言えば胸がバクバクしてます…」 さらに膝の上の手を重ね、強く握った。 「…二神さんの気持ちは嬉しかったです。けど、まだ信じられないというか…。実感が湧かないのです。私いっぺんに二つのことを考えられなくて、まずは仕事に集中しようと思って…」 言いながら私は二神さんに酷い、失礼なことをしていたことに気が付いた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加