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「美崎さんもしかして、仕事が忙しいあまりに俺が交際を申し込んだこと忘れちゃった?」
胸がドクンと悲鳴をあげた。
膝の上の拳を固く、ぎゅっと握る。
「…ちゃんと、覚えています。二神さんこそ忘れて仕事に没頭しているものだと…」
「自分が言ったことを、こんな短期間で忘れたりしないよ」
二神さんはふっと笑った。
「仕事に没頭というより今は目の前のことに集中して欲しいから、あえて普段通りを心がけた。…正直もう少し、美崎さんの方は動揺すると思っていたけど」
「……動揺、してます。今も本音を言えば胸がバクバクしてます…」
さらに膝の上の手を重ね、強く握った。
「…二神さんの気持ちは嬉しかったです。けど、まだ信じられないというか…。実感が湧かないのです。私いっぺんに二つのことを考えられなくて、まずは仕事に集中しようと思って…」
言いながら私は二神さんに酷い、失礼なことをしていたことに気が付いた。
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