*花嫁の衣裳*

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「……はい」 一言返事をするので精一杯だった。 それなのに、二神さんは満足してくれたのか、優しい表情になった。 「ありがとう。よし。じゃあ戻って仕事しようか。そろそろ、戻る時間だ」 二神さんは腕時計に視線を向けた後、落ち着いた声で言うと、エンジンをかけながらシートベルトをした。 二神さんの優しい声を聴いて、さっきまで怖かったはずなのに、嘘みたい。 今は安心を感じる。 『一度デートしよう』 色々なぜ? という疑問はある。でもその一言で胸がぎゅっとなったし、今も胸を熱くしている。 ぐるぐると頭の中で回る疑問たちをあっという間に吹き飛ばし、デートを楽しみにしている自分がいた。 …二神さんのこと、怖くて苦手だったくせに。我ながら現金で単純…! 目の前にプレジールが見えてくる。 二神さんとの関係はどうなるかわからない。けれど今は深く考えず、もう一度胸の奥にしまって、目の前の仕事に集中しよう。 そう自分に言い聞かせた私は、無理やり仕事モードに自分のモチベーションスイッチを入れた。
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