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まさか真後ろから声をかけられるなんて思ってもいなくて慌てて振り向くと、髪をひとまとめに後ろで結び、カーキ色のガーデニング用ショートエプロンを腰に巻いた、笑顔が素敵な女性が立っていた。
「おはようございます」
「おはよう、ございます!」
元気よく挨拶を返すと、その女性は私をまじまじと見てきた。そしてにこっと歯を見せて笑った。
「プレジールさんのところにこの春から入社された方…ですよね? 初めまして。フラワーショップ、“アリスの花”、の榎木です」
「美崎と申します!」
ぺこりと頭を下げて、ポケットから名刺入れを取り出し一枚引き抜いて渡した。
プレジールで扱う花のほとんどはアリスの花。けれどいつも配達をしてくれるのは男の人で、清楚で落ち着いた雰囲気の榎木さんには初めてお会いした。
担当が変わったのかな?
私がこの春から入社なのを知っているということは、以前からプレジールに出入りをしていたということになる。
「今週末の挙式で使う花の見積書を持参しました。ご担当者の二神さんが見当たらなくて…。私すぐに行かなくてはいけないのでお預けしてもよろしいですか?」
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