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次々とスタッフやプランナー仲間に話かけていく二神さんの横顔を見つめる。
…今更ながら、二神さんとの距離を再確認した。
自分のデスクに戻り滝野さんにケーキを手渡すと、すとんと椅子に座った。
ケーキにフォークを刺し、口に運ぶ。
「…美味しい」
このケーキも二神さんが手配して買って来たのだろうか。それともうちのシェフにお願いして作ってもらったのかな。
「…やっぱり、信じられない」
二神さんは、誰よりも仕事熱心でできる人で。
厳しくて怖いけどそれだけじゃなく、スタッフ想いで優しい。
お客様や支配人からも信頼されていて、私なんかよりずっとずっと大人で…
私からすごく遠くにいる人。
そんな完璧な人が、なんで私を婚約者に…?
「…釣り合わなさ過ぎです」
仕事に集中しようと心の奥にしまい込み蓋をしたはずなのに、自発的にぽこっと蓋が取れてしまった。
胸はいちいちドキドキするけれど、逆に頭は冷静になっていく。
どうして私なのか。
なぜ今だったのか。
頭の中で同じ単語がぐるぐると回る。
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