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「驚いたのはこっちだよ。どうしたの?」
「えッと…。さ、差し入れを持参しました!」
支配人に向かって手をめいっぱい伸ばし、紙袋を差し出す。
「…お世話になっている二神さんや、遅くまで働いているスタッフさんに食べてもらおうと思って…味の保証は致しませんが、どうぞ召し上がってください……!」
「…え。わざわざ持ってきてくれたの? ありがとう。とりあえず、中に入ろうか」
支配人が事務所のドアを開ける。
私と支配人のやり取りが聞こえていたのか、中を見やるとすぐに驚いた様子の二神さんと目が合った。
バツが悪くて、すぐに視線を二神さんから外す。適当に自分のデスクなんかを眺めた。
「美崎さん、こんな時間にどうした? 何か忘れ物?」
「え? あ、はい、ちょっと…」
視界の端で、二神さんも支配人と同じようなことを聞きながら私の側に寄って来るのが見えた。その後ろには榎木さん…。
「こんばんは」
挨拶されて、視線を榎木さんに合わせる。
榎木さんはにこりと私に微笑むと、二神さんと支配人に、またよろしくお願いします。と頭を下げてそのまま帰って行った。
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