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「…式の追加の花の確認に来てくれたんだ。明日朝一だし電話じゃ色の差までは伝えられない。違っていたら悪いからって」
二神さんは私が疑問に思っていたのが分かったようで、質問する前に答えてくれた。
「美崎さんは、二神の為に差し入れを持って来てくれたみたいだよ」
支配人の言葉に肩がビクッと跳ね上がった。
横にいた支配人は、二神さんに紙袋を差し出し、なぜかにやにやと笑った。
「差し入れ?」
二神さんは紙袋を両手で受け取りながら、再び私を見た。
「…はい。お口に合うかは分かりませんが…支配人と二人で食べて下さい」
「二神、先に食べてていいよ。私は戸締りをしてくる」
支配人は私に向かってニコッと微笑むと、さっさと事務所を出て行った。
えっ嘘。いきなり、ふたりっきり…!
あまりの静けさと気まずさに、息が詰まりそうになって焦った。
…とても、間が持たないです…。
支配人、早く帰ってきてください…!
「中、見てもいい?」
二神さんの声に、トクンと胸が跳ね上がった。
「もちろんです。美味しくなかったら捨ててください。では」
私はぺこりと頭を下げると、逃げ帰るためにくるりと反転。二神さんに背を向けた。
「え? ちょっと待って美崎さん!」
逃げるより先に呼び止められ、同時に私の手首は、二神さんに捉えられていた。
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