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「美崎さん、ありがとう。早速食べていい?」
「……どうぞ」
「すぐ食べ終えるの勿体ないけど、美崎さんを送るために急いで食べる。それまで待ってて」
「…分かりました。から、あの…手を、離してください…」
「ああ。ごめん」
そう言うと、二神さんは一瞬私の手首を握る手の力を緩めた。
「美崎さんも一緒に食べよう」
手首が自由になったと思ったのに、次の瞬間、二神さんは私の手を掴み、引っ張った。
「わっ!」
二神さんとの距離が縮まり、心臓が暴れる。
「ふ、二神さん。手を離してください! もうすぐ支配人が…」
支配人に見られて誤解されたらどうするのですか! と言おうとした矢先、二神さんのスーツの内ポケットから着信音が聞こえてきた。
紙袋を持ったまま二神さんは器用にスマホを取り出し電話に出た。
「…支配人? …はい。分かりました。もちろん責任もって。はい。では…」
電話しながら二神さんは、ふっと笑って私を見た。
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