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『ごめん、突然電話して。仕事をさっさと終わらしてくる』
私はそばにある置き時計に目をやった。
…二神さん、あまり遅い時間にならないように、この時間に電話をかけてきてくれたのかも…。
そう気がつくと、無性にまた夜食を作って持って行きたくなった。だけれど、さすがに今からだと逆に迷惑だと、思い直した。
「…連絡、ありがとうございました。お仕事頑張ってくださいね!」
『うん、ありがとう。じゃあまた明日』
「…おやすみなさい。二神さん。また明日!」
いっちょまえに励ます気持ちで、必死になって、明るい声を心掛けた。
…今すぐ会いたいと思う気持ちを、ひた隠しにして。
それなのに、
『おやすみ。…恋乃香』
「こっ…!?」
なんとか自分の気持ちを取り繕えたと思ったのに、その苦労は一瞬にして泡と消えた。
二神さんは平然と私を呼び捨てにすると、そのまま通話を切ってしまった。
おかげでこっちは頭が真っ白。
ぽとりとスマホを床に落とす。
「ね、眠れないっ…!!」
今夜は悶々とした夜になることを、私は覚悟した。
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