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あまりの近さと言葉に驚き過ぎて、私は再び息を飲み込んだ。
「…迷惑じゃなければ、これからもプライベートでは上司じゃなく二神俊として、美崎さんに接するけどいい?」
二神さんの真っすぐな視線に、私の胸は射抜かれたのが分かった。
嬉しくて、胸が高揚していく。
伝えなくちゃ。
二神さんのことが好きです。て…。
…早く、今すぐに…!
だけど、そう思えば思うほど、なぜかブレーキがかかった。
私が悩んで勇気を探している間、二神さんは根気よく待ってくれた。
しばらくして、諦めるように掴んでいた手を二神さんは離した。
「…強引だったね。今日一日連れ回したり、無理に付き合わせて悪かった。もう、忘れて」
私がもたもたしている間に、二神さんが引いたのが分かった。
時間差で胸に衝撃が走る。
「…押しつけがましくてごめん。出直します」
二神さんの方から歩み寄る様に詰めてくれた距離。それを、にこりと微笑みながら二神さんは、いつもの距離感まで戻って行く。
海岸に打ち寄せた波が引いていくようにすうっと。
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