92人が本棚に入れています
本棚に追加
「…美崎さん、楽しんでる?」
猫のぬいぐるみをうっとり見つめていたら、改めて聞かれてしまい、私は顔をあげた。
にこりと微笑み見下ろす二神さんと目が合う。
「…楽しいです」
急に恥ずかしくなってちょっとはにかんでしまった。
「楽しんでくれているならよかった。でも、もっと美崎さんの喜ぶ顔が見たい」
胸がまたトクンと跳ねた。
…そうだった。
二神さんはもともと人を喜ばせるのが好きな人。
私はもらった人形をぎゅっと胸の前で抱きしめると、一歩二神さんに近づいた。
「今日、ここに連れてきてくれて、ありがとうございます」
私なりに、精一杯笑顔を作り二神さんを見上げた。
「…次、行きましょう!」
意識しながら笑顔を向けるって、めちゃくちゃ恥ずかしいですっ!
感謝を伝えようと試みてみたけれど、思った以上にとても難しいことだった。
どうにも耐えられず、すぐに顔を逸らしてしまった。
照れくさいのを誤魔化すように、建物の外へ出る。
そのまま駆け出そうとした瞬間、
「美崎さん、足元!」
二神さんの大きな声が耳に届いた。
最初のコメントを投稿しよう!