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建物の外は中庭で、私は、そこが緩い下り坂になっていることに気づかなかった。
傾斜に足を取られ、危うくこけそうになった。
「美崎さん、そそっかしいな」
私は左腕を二神さんに掴まれてしまった。そろりと振り向く。
いつもの仕事の上司、呆れた顔の二神さんがそこにはいた。
目が合うと二神さんは私の二の腕から手を外し、そのまま手を差し出してきた。
「こけたり、迷子にならない様に繋ごうか」
「…やっぱり私のこと、子供扱い…」
「…子供扱いしないとブレーキが利かなくなりそうで。扱いが不満なら本気出すけどいい?」
まだ本気じゃなかったのか! てか、ブレーキって…と驚いたその時、
「あ!」
二神さんの後方、建物の入り口から急に女の子が走り出てきて、ずべっと勢いよく転んだ。
「大変っ! 大丈夫?!」
私は二神さんの手を取らずに通り過ぎ、その女の子に駆け寄った。
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