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「いたーいっ!」
女の子は両腕をすりむいていた。歳は小学校低学年くらい。
手を怪我したのは、私がさっき二神さんに買ってもらったばかりのと同じ猫のぬいぐるみを抱えていて、離さずにこけたからだった。
「血が出てる。ちょっと待ってね」
私は自分で言うのもなんだけど本当にそそっかしい。
この歳でよく転ぶし、擦り傷なんて日常的に作ってしまうため、絆創膏などの救急道具は常に持ち歩いている。
ハンカチガーゼを取り出し、止血をする。
「美崎さん、これ使って」
二神さんは飲みかけのミネラルウォーターを、私に差し出してきた。
御手洗いは建物の奥にあるし、他に水場が近くに見当たらず私はペットボトルを受け取るとガーゼを濡らし、傷口の汚れを丁寧にふき取っていった。
幸い傷は浅そうだし、携帯の消毒液も持っていたため、傷を消毒すると、絆創膏を張ってあげた。
そのころには女の子も泣き止み、ありがとうと言ってくれた。
「お父さんお母さんと一緒かな? 戻れる?」
「うん。でも…せっかく買ってもらったぬいぐるみが破れちゃった…」
女の子がなかなか笑わないと思ったら、人形を気にしていたからだった。
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