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ぬいぐるみは白い猫なのに茶色く汚れ、少し顔が破れている。
「大事にするって約束したのに…」
女の子がまた泣きそうになり、目線を合わせるようにしゃがんでいた私はそれに気が付いた。顔をあげて、二神さんを見る。
二神さんは私の考えをすぐに理解してくれて、黙って小さく頷いた。
すぐに女の子へ向き直した。
「あのね。実はお姉ちゃんも同じ人形持ってるんだ。しかもさっき買ったばかりの新品! その子と、これ、交換してくれる?」
私は二神さんからもらったばかりのぬいぐるみキーホルダーを、その子に差し出した。
「え…? でも…」
さすがに女の子も悪いと思ったみたいで、困った様子だった。けれど私は無理やりお人形を押し付けた。
「お姉ちゃんね、この子のお傷も治してあげられるけど、もう絆創膏がないの。だからお家に連れて帰ってお風呂に入れてから治してあげようと思うの。だから交換してもらってもいいかな?」
女の子は驚いて、しばらく考えてから、
「この子を治してあげてね」
と言って、私のぬいぐるみを受け取り、破れたぬいぐるみをくれた。
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