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「…美崎さん、ごめんからかったりして」
完全フリーズしていると、それに気が付いた滝野さんがそっと私の肩に手を置いた。
「あれが二神さんの本心とは限らないと思うの…」
とても申し訳なさそうに滝野さんが言ったので、私は無理やりうんと頷き笑顔を作った。
「あとで、ちゃんと二神さんと向き合うのよ。とりあえず私は戻るわね。お疲れ」
「…はい…お疲れ様です」
滝野さんは心配そうに見つめたあと、踵を返し、急いで二神さんの背を追いかけていった。
*
上がっていいよと言われたけれど、まっすぐ家になんて帰れない…。
退社後、私はこれっぽっちも帰る気になれなくて、プレジールそばの浜辺で二神さんが仕事を終えるのを待つことにした。
浜辺と言っても、テトラポットが連なる一体にはこの時間人の姿はない。
物思いにふけるにはちょうど良く、堤防に座ると、ぼおっと太平洋に沈む太陽を眺めた。
二神さんには着信を残してある。
ここで待っているというメッセージも一緒に。
仕事が終わるのが何時かわからないけれど、私は何時間かかっても、プレジールを眺められるここで待つつもりだった。
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