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『美崎ちゃん、さっきのお客様と食事に行っちゃいますよ』
『いいんじゃない?』
…それって、どうなんだろう。
私には理解できない。
いくら考えても、二神さんの気持ちが私には分からなかった。
「恋乃香…こんなところで待たずに家に帰れよ」
太陽が海に沈み、ブルーモーメントが訪れた時、二神さんは現れた。
「夜の海は危ない」
もう、ほとんど明かりがないため、二神さんの表情は読み取りにくい。
でも、お説教モードだということはすぐに分かった。
…それでも、会えたことには変わりなくて、嬉しさが込み上げてくる。
つい、笑顔をこぼした。
「二神さんがそばにいてくれたら危なくないです」
「その根拠はどこからくるの?」
呆れながらも二神さんはそばに来ると、私の横に並んで座った。
ネクタイを緩め、シャツの上のボタンを外す。
「…仕事、もう終わったのですか? いつもより早い…」
ジャケットは脱いできたらしい。ラフな格好にそう思った。
「終わったよ。恋乃香さんがここで待ってるからこれでも飛んできた。で、鼻はどう?」
二神さんは心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「怪我したから、早めに上がってもらったのに」
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