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お互いの実家に挨拶に行ったときは、まだ一つになる心の準備が整っていなかった。
私の気持ちを待っていてくれていること、二神さんの方から一線を越えようとしないことは十分伝わっていた。
これだけ大事にされていたのに。
傷つけたくなかったのに。
自分に自信がないだけに、結果、二神さんを避けて傷つけてしまった。
そのことがやっと腑に落ちるように実感して、申し訳なさと愛しさで涙が止めどなく流れた。
「泣いてる…」
二神さんはふっと困った顔で笑うと、指先で私の涙をぬぐう。
「ごめんなさい…でも」
「…でも、止めないけどいい?」
かっと顔が熱くなった。
「…やめないでください…」
小さな声で言ったのに、二神さんはにこりと笑うと私をきつく抱きしめた。
二神さんの腕の中って、とても安心する…。
二神さんにとっても私がそう言う存在でありますように…。
「恋乃香」
耳元で、何度も囁き呼ばれ、
体の奥深くまで響く振動が増すたびに、
切なさで胸が熱くなり涙が目から溢れ、頬を伝う。
しがみつくように二神さんの背に手を回し、私も何度も名前を呼んで、好きですと可能な限り繰り返した。
気持ちが伝わる様に私は、果て尽きるまで、愛しい人を抱きしめ続けた。
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