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 われわれが共有しているのはひとつだけ、酒をやめ続ける、アルコールを絶ち続けるという誓いだけです。アメリカで生まれたアルコホリック・アノニマス、無名のアルコール依存症者の会がもとで、営利 団体ではありません。運営に必要な費用は寄付をお願いしています。 私は世話役のようなことをやらせてもらっているビン、と言います」 と、他のメンバーたちが低く湧き起きるように一斉に、 「こんにちは、ビン」 と答える。  ちょっと宗教がかった雰囲気だ。  それまで雰囲気に慣れない様子でそわそわしていたカナがちょっと当惑する。  ゴロはむすっとしたまま何とも言わない。  ビンが続けた。 「では、どなたか話されたい方は」 タツが手を挙げて立ちあがる。 「私は、今年の二月三日で酒をやめて丁度二十年目になりました。それでもらった、メダルがこれです」  と、出して見せる。  ビンが拍手する。  他のメンバーも拍手する。  カナとゴロも調子を合わせて拍手する。  ゴロが 手を伸ばした。 「すみません、ちょっと見せていただけますか」  タツからメダルを受け取って、ちょいちょいと表裏見て「どうも」と返す。 タツは言った。
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