1人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女も、同じ扉から乗車する。だからガラス越しに彼女の姿を認める。同時に彼女も。そして、乗車の際、互いに見つめ合う。その折、彼女はつぶらな瞳が更に瞳孔を拡げる。僕は、そんな彼女の面持ちに、やや、安堵し、少し奥に詰め、立っていた所を彼女に譲る。そうして、彼女は、僕に背中を向け、窓からの景色を眺める。
あの瞳孔の開き様、それって少なからず僕のことを意識しているからだろうか。何だか根拠に乏しいけど。そんな僕を友人は、単なる自意識過剰だって揶揄するんだ。
目的の駅は、佳人が乗った駅から15分ぐらいのところ。電車に揺られている間、その後ろ姿に密接しながら、どことなく悦に浸るんだ。でも、それにおさまらず、時として、彼女の肩を抱きたくなる衝動にかられることも。もし、彼女がそれを知ったら…。気持ち悪がるだろうか。でも、僕には、そんな風に思えなかった。もちろん、彼女も、肩を抱かれるまでは望んでいないだろうけど、僕が、好意を寄せていることぐらいは分かっているんじゃないかって(笑)。当世風なこんな乗りで。しかも、降りる駅も一緒だった。僕は時より改札を出たあとの彼女の後ろ姿を認めつつ歩いた。そうして、彼女は、とあるビルへと入っていく。
最初のコメントを投稿しよう!