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ルーティン
ルーティン。まさに。だけどそれ以上のものでもなかった。それだけにもどかしさを感じていた。
毎朝の急行列車が、何両編成で、僕の乗車位置が、何号車の何番の扉かも知らないままだった。確からしく言い得るのは、エスカレーターの降り口のすぐ左、その乗車口ということだけだった。ただ、こうして定位置を持ったのは、偏に次の停車駅で佳人が乗り込むだからだ。
佳人って、それ相応に古めかしい言い方に違いない。でも、こうも言いたくなるのも、それなりに理由があったからだ。敢えて美人ではなく、こう形容したくなる、という具合に。もちろん、内心では、インテリを装いたいという、ケチな考えもあった。もともとこの言葉を知ったのは、小説の文庫本の背表紙からだった。読みもせず、本棚に置きっぱなしにしていたあの本の。そうして、この言葉に、そう、ただのインプレッションから、佳人のイメージを創っていた。もちろん、イメージの全てが彼女と重なり合う訳でもなかったが、一つ言えるのは、彼女に、美人という言葉がしっくりこない、或いは、収まりきらない佇まいがあったことだ。
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