無能の象徴

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無能の象徴

 公園の巨大な池の奥に森がある。池の周りには桜の木や紅葉など季節に彩を与えるものが多いが、見る限り森には小楢か欅がほとんどだった。春から夏にかけてはただ色を濃くし、あとはさみしくなるばかりである。それゆえ、人があまりいない。人がいるのはせいぜい秋くらいまでで、冬はがらんどうの森であった。  人付き合いは苦手だったが、中学までは友達と呼べる人がいた。しかしそれも卒業と同時に疎遠になった。皆いずれかの進路を選んだようで、私のような人間と連絡を取り合うような輩はいなかった。私は卒業と同時に職業と呼べるような何物も失い、ただでさえ少なかった交友関係もなくなった。  その後は何をするにも当てがないので、必然的に暇になる。それだから、しばらくの間は思い立っては外に出て徘徊するような生活を続けていた。しかしそれにも飽きてしまった。十五六の男がただ歩くなぞしても、有り余る体力を消費するにも至らないのだ。歩く距離は次第に伸びていき、私はとうとうその公園にたどり着いた。     
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