いつかのキスのように

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例の恐怖体験により、彼女と出会うことが出来たわけだが、不思議なものである。 これまでの僕は、大した恋愛経験はなかった。 友人関係から先に進むタイミングがうまくいかない。 まるでオスプレイみたいだ。 ヘリコプターモードから飛行機モードに変わる瞬間の気圧問題みたいだ。 友人から恋人への意識改革が、心の中で何かが逆噴射するのである。 今この時代、腕に入ったチップが大体のことをやってくれる。 20年前、電車に乗るには切符を買っていたのだ。 銀行に行って手のひらを当てて金を下ろすのは当たり前で、それが出来ずカードをガチャガチャやってるのは、高齢者かホームレスくらいだろう。 だが、そんな時代変化の中で、人と人のやりとりに関しては、一貫したアナログワークである。 先日、意見対立した人工知能をダンプで引き殺した事件が起きたが、殺伐としてる。 彼女とは毎週日曜にカフェに行っている。 穏やかな気分になる。 居心地が良いのだ。 そして、僕の中で、やがて友達から恋人への自我が目覚めていく。
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