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それは遠い昔のように感じるけど実際はたった一つ前の季節のことだ。 その時、学校も勉強も面倒くさくて制服のまま堂々と防波堤に座り込みサボっていた。 「あっつ…」 使用頻度の低い教科書を出してバサバサと風を無理やり作った。 こんなに暑い中、海が見たいのはなんでだろう。海辺の田舎町にずっと住んでいるから珍しい景色でもなんでもない。家から自転車をこげばいつでも見れる景色なのに。 バサバサ、教科書は知識をつくるのにも風を作るのにも適してない、なんでこんな無意味なものが存在するのやら。 「君、どいてくれる?そうだな、できれば右?」 反射的に振り向くとカメラを構えた一人の男。20歳を少し超えたくらいの見た目で風が少し伸びた髪をなびかせていた。 今なんか言われたよね。右…だっけ? 「ああストップ。やっぱそこでいいや」 カシャ、カシャとスマホとは違うシャッター音。撮り終わりそれを確認すると私に向けてなのか親指を立てて笑顔でこう言った。 「ナイス!さすがこの景色、あと君もよかった」 「はい…?」 男は私に近づいてくる。なに、なにこれ?盗撮にしては堂々だった。こんな人この町にいた?いないよね、じゃあ誰よ? 頭の中にはクエスチョンマークが踊っている。それでもなんでか「逃げよう」とは思わなかった。
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