私が左手を気にする理由

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私に何も言わずに先生に許可を取って席を替わるというのは、不注意な私に我慢できなくなったという意思表明に違いない。本当はこんなにも迷惑がられていたのかと思うと寂しくて悲しい気持ちになった。 言ってくれればよかったのに。それさえも嫌だったのかなぁ。 でも今は自分の気持ちよりも、もう一度謝ることが先だ。 「横山くん、あの……」 「ごめん、勝手に」 いつもと同じ穏やかな声で、逆に心配が増す。彼の感情が読めない。 「いや、迷惑かけてるの私だし」 「違う違う。俺の利き手のせいでいつも気を遣わせて悪いなってずっと思ってて。ちょうどいい機会だし。これで和田さんも集中できるかなと」 「えっ、いや、全然そんな」 「ごめんね。いつも気にしてくれてありがとう」 予想していない言葉に戸惑ってしまう。しかし、表情に出さない彼のことだ。これもまた気を遣わせているだけなのかもしれない。 「いや、そんなこと。不注意な私が……」 そのとき、突然、机の下にあった左手が掴まれた。 驚いて思わず左を見ると、私の左手が横山くんの右手と繋がれていた。そして彼は周りに聞こえないような小声で言った。 「ごめん、さっきのは言い訳。本当はただ俺がこっちに座りたかっただけだから」
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