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声も出せずに、手から彼の顔へと視線を移す。すると横山くんはいつもの表情で普通に黒板のほうを見ていた。
「あの……」
「こっちだと、こうしたまま書けるから」
お互いの利き手はノートの上。そして、机の下で繋がれた反対の手。一番後ろの端の席だから、その手は先生にも他のみんなにも見えない。
横山くんはやはりこちらを見ずに、ノートを取っているけど、私はそれどころではない。全神経が左手に集中している気さえしてきた。
なんで? なんなの、この状況。
この繋がれた手を、どうしたらいいの?
恥ずかしいし、手汗が心配になるし、こんな中で集中できるわけないし、地質断面図どころか文字だって書けないし、どうしていいのかわからない。だけど、その手が振り払えないのは、嫌ではないからだ。なんとなく、離したくない気がする。というか、嬉しい、気がする。そして、そんな自分の感情に戸惑ってしまう。
すると、横山くんはこちらに顔を向けずに、握った手に少し力を込めた。
あぁぁ。もう。なにこれ。ものすっごい照れるんだけど。
左手も心臓もぎゅっとされたみたいで叫びたくなる。手も顔も熱いし、鼓動がうるさくて、先生の声なんて聞こえてこない。
授業はあと十五分。恋を自覚するには充分すぎて、私も気になる左手にぎゅっと力を込めた。
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