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「なら、17時に正面玄関だ。絶対に遅れるな。分かったな?」
「……、」
愛未の正面に立った悠斗。見下ろしてくる双眸に威圧された愛未は縛られたように動けない。
底の見えない漆黒から感情を読むことは出来ず、愛未は言われたとおりに悠斗の命令に従うほかなかった。
悠斗にも従わせる以外の選択肢はなかったのだろう。
「分かったなら、仕事に戻っていい」
優雅にジャケットの裾を翻した悠斗は自分のデスクへと戻っていく。
有無を言わさず愛未を縛っていた瞳に愛未の姿はもう映っておらず、今はデスクのパソコンへと向けられている。
言葉はなくとも、退室の命をヒシヒシと感じた。
「…失礼しました」
当然だが、悠斗からの返事はない。
視界の外へ追い出された愛未は混乱しながらも深く一礼し、悠斗専用の執務室から出ていくほかなかった。
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