苦情文書をしたためよう

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さて。 僕こと真田聖司と『エブリデイズ 星空通り店』の出会いについて少し触れておこう。 そこそこ名の知れた大学を卒業し、今年で晴れて社会人生活三年目を迎えた僕は、勤務先の会社から転勤を命じられた。入社時から決定していたことで、特に不満は無かった。 ただ転勤先の町は、都会育ちの僕にとってはかなり不便を感じる土地だった。 ちょっとそこまで、と言える距離にはスーパーもコンビニも見当たらない。 田舎とまではいかないが、それに似た環境と言っていいだろう。 すっかり都会馴れしてしまっていた僕にとって、この状況が如何に不便かを思い知ることとなる。 例えば、弁当だ。 自炊の苦手な僕はコンビニ弁当に頼ることが非常に多いタイプだった。残業続きの疲労した身体で、朝から弁当を作ることがどんなに大変だったか。 世の奥様方、母親に対して敬意を表したい。 飲み物一つにしても、欲した時に買いに行けないという事態が、これほどストレスを招くとは予想外だった。 唯一社内に設置されている自販機の缶コーヒー類に、ブラック無糖が無いことを知った時の僕の落胆振りは激しい。 朝晩コンビニに立ち寄るという行動が日常化していた僕にとっては、生活の一部が欠けてしまったと言っても過言ではない。 猛暑にはアイスクリーム、冷えたドリンク。厳冬には心まで温まる、ほかほかの肉まん、味の染みたおでん。季節やコンビニ限定の商品も今では珍しくないし、その便利さは食に限ったことではない。 週間誌やコピー機、郵便。果ては数々の日用品まで。 多少値が張るのは目を瞑ろう。 何しろ便利なのだから。 そう、僕はどっぷりとコンビニに依存している。
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