転生トラックを邪魔する者もいる

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転生トラックを邪魔する者もいる

 信号機の上に立っていたのは人だった。ただそれが自分たちと同種同類であるかと問われればどうやら答えは否というしかないようであった。  そもそも梯子もなければ近くに伝って登れそうな場所もないところに一人、それも救助綱つけずに真っ直ぐ立っているのだから、そいつはもう奇妙でしかない。 「勇者転生業者って召喚術士然としているのかと思ったけれど、随分粗野な感じねェ」 「見た目で判断して痛い目見るのはどこの世界でも一緒だと思うぜ」  爆風で被った砂埃を軽く払い落として、東一は立ち上がった。  信号機の上に立つのは女。足元の明かりにぼんやりと映る髪の色は白か銀。その髪から伸びるのは……長細い耳か。 「ダークエルフ族……か」 「あら、ひどい呼び名。ハルメティア。と呼んでくださる? 人間を転生させて異世界の運命を変えようとする傲慢を裁く者の名を告げれば、審判の主もきっと同情してくれるかもよ」 「あァ? そもそもてめぇらが狼藉働いて、人の命を軽んじたり、滅亡させようとするその思想を他人に強制させるからだろ。悪いのはそっちじゃねーか」  それに対する返答はなかった。  図星を突かれて答えに詰まったのか、そもそも話を聞く気がなかったのか。  ただどちらにしても、引き下がるという様子は見当たらなかった。ハルメティアの背後にある星も浮かばない灰色の空が赤黒く歪んだのがその証左だ。 「ほら、すぐそういう態度をとる。エルフ族ってのは頭がいいと言われてるが、そういうのも見かけでは判断できんかねぇ。いやぁ、助かりはするけどな」 「お黙り!!」  ハルメティアは邪魔者を薙ぎ払う手の動きをさせると同時に、黒く輝く矢が生まれ、東一に襲い掛かった。
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