転生トラックを邪魔する者もいる

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 刹那、カーテンのようなプリズムが東一とその背後にいる夕霞を包み、ハルメティアが放った矢を雲散霧消させた。 「この力……!? ははァ、後ろのガキ、転生者なのね」 「夕霞と申します、よしなに」  夕霞は防御壁を差し出した腕一本で維持しながらも丁寧な物腰は崩さない。 「こんなガキに助けられてんの? 人の運命は無茶苦茶にするし、自分が襲われれば乱した運命の子のお世話になるなんて、アハハ、サイッテー!」  ハルメティアは嘲笑しながらも次々と攻撃的な力を放ち続ける。そのあまりの速さに夕霞も柔らかな顔が維持できなくなってくる。その事に東一は驚くしかなかった。先ほどのトラックの荷台で振り回されても気にする素振りも見せないくらいの能力を持ち合わせる夕霞が今まで涼やかさを失うことはなかったからだ。 「東一様。堪忍くださいまし……」  東一を守らなければもう少し自由に戦えたのだろうことが窺えると、東一は口をへの字に曲げた。  ハルメティアはそうやって東一に心の負担を負わせて、この防戦一方から打って出ることを画策しているのだろう。 「夕霞が押し負けるなんて思ってもおらんさ。お前と契りを交わす為に100を超える世界を旅したんだからな」  その言葉にハルメティアが目を丸くして攻撃の手を止めた。 「100の世界? あんたも転生者なワケ……?」 「ここは古巣なんでな、自分で世界に影響を与えたくないだけさ」  にやりと笑って、東一は夕霞の守護から前に進み出た。次なる一撃を受けたとしても気にしないということを示すように、だ。  ハルメティアはその言葉の真贋を推し量るようにして、東一をねめつけた。  100の世界を渡る転生者などまずいない。たとえ世界をつなぎ異界のエネルギーを呼び出す召喚士だとしても、対応できる世界の数は魔力によって決まる。どんなに優秀でも両手で収まってしまうことだろう。 「ふ、ン。まあそれが事実だったとしても」  ハルメティアは瞳をわずかに振るわせて、口が裂けそうなほどににまりと邪笑を浮かべた。 「転生能力を持つアンタが死んでくれればそれでいいのよ。その為なら、周りの犠牲なんてアタシにはどうだっていいんだから」  瞳の振れが何を意味しているのか、東一ははっと気づき後ろを振り向いた。
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