晴と雨

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 私は田舎の高校に通う、自他共に認める根暗な女の子、雨宮兎(あまみや うさぎ)。今日から高校二年生になった。  趣味や特技なんて何も無く、仲の良い友達だっていない。  私と真面に話すのは、幼馴染の晴澄陽平(はるすみ ようへい)だけ。家が近いと言う理由で一緒に登下校するだけの存在。  陽平は明るくて晴れやかで、太陽みたいな性格だ。それに比べて、私はシトシトと降る雨の様な暗い性格。遊ぶ事も無いし、これ以上仲良くなるはずもない。  そんな陽平がアルバイトをして、貯めたお金でギターを買ったらしい。歌う事が好きで、兄のギターを借りていつも演奏していたと言う。  どうでもいい。  文化祭のステージで歌って思い出を作りたい様だ。  私には関係ない。  目標は三年生の文化祭までに曲を完成させて歌う事。  好きにしてくれ。  そう思っても声に出さない。だから陽平は一方的に語り掛けて来る。 「気付いた事があってさ、田舎って何も無いと思ったけど空は綺麗なんだよな。空の青さと自然溢れる景色が気持ちいいんだ。なんか心が軽くなるよ」  何を言っているのだろう? 頭の中で陽平の言葉を分かり易く並べ替えてみた。  ふと気が付いた。空の青さと自然の彩。何も無いと思っていた景色が体に染み渡り、心を満たして行く……  ……  ……  ちょっとだけ気に入った。  私は鞄から手帳とボールペンを取り出して書き留める。
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