晴と雨

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 桜咲く季節。  いつもの帰り道が工事中で通れない。  陽平の提案で、少し遠回りをして帰る事にした。  暫くすると、綺麗な桜並木が視界に飛び込んでくる。幻想的に舞い踊る桜の花びらは、くるりくるりと楽しそうに飛び跳ね、私の頭へ無事に着地した。 「綺麗だな。桜のトンネル……いや、桜のアーチだ。こういう神秘的なものを見ちゃうとさ、創作意欲が湧くよ。ここに来て良かった。よし、花びらを一枚拝借……あれっ? うまく掴めないなあ。まあいいや。来年の文化祭に向けて頑張るぞ」  私もこの美しさに感化されたのだろうか? 再び陽平の言葉を解釈して並び替える。  桜のアーチを潜り抜け、楽しそうに踊る君を夢中で追い掛ける。希望を胸に抱き、掴みかけた夢の欠片は振り返らずに自由を見せつけた。明日へと進む希望を残して……  私は鞄から手帳とボールペンを取り出して書き留める。
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