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蝉の大合唱が耳を刺激する季節。
委員会の活動が遅くまで続き、私と陽平が帰る頃には暗闇に包まれていた。
無言で歩く田んぼ道。そこへ、大きな爆発音が響き渡った。
振返った視線の先には綺麗な打ち上げ花火。私たちの足を止め、誇らしげに夏の夜空を彩る。
「もう祭りの季節か……綺麗だな。俺もあの打ち上げ花火みたいに、人生の花火をでっかく打ち上げたいよ。……じいちゃんがよく言ってたけど、人生の花火って表現は古臭いかな? まあいいや。先ずは来年の文化祭だ。成功させて勢いをつけるぜ」
キラキラと光る花火に、陽平の陽気な言葉を重ね合わせて考えた。
揺るがない意志は足元を忘れずに見据え、心に刻んだ想いは加速する。大げさな夢を肩に掛け、夜空に咲く大輪の華に向かい、声に出して誓いを立てた……
私は鞄から手帳とボールペンを取り出して書き留める。
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