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僕がその店を訪れたのは、口コミだった。
その店は『黒い森の魔女』という骨董屋を開いている女性から教えられた。一応、レストランなのだと彼女は言っていた。
僕はその店を訪れた。僕はグルメ家で、ありとあらゆる食事を嗜んでいた。
その店に入ると、A定食が定番なのだと言う。
この店には、幽霊が出る、という噂もあり、付近の住民は近寄らないらしい。けれども、何故か、潰れず、更に客が途絶える事は無いらしかった。
店の中は閑散としていて、レストランというよりも、喫茶店といった趣だった。古いレコードが流れていた。店には顔の輪郭が、何故かぼやけているような店主がただ一人いる。他に給仕はいないのかもしれない。
僕はA定食を注文する。
10分程経過して、僕の前に料理が運ばれてきた。
それは、スープだった。
僕は、スプーンでスープをすくって、それを口に入れる。
今まで、食べた事の無い味だった。
何故か、安田さま、と書かれた紙が置かれている。僕の名前だ。僕は初めて、ここに予約なしで訪れた筈だったのだが。
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