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「よっ、左近、シケタ面して、また華桜ちゃんのお小言食らったな。今日は愛の鞭、何個だ?」
月丘駅前商店街は全長約二百五十メートル、小さな商店街だが未来を見据えたソーラーアーケード付きの商店街だ。
巷でよく噂される『幽霊商店街』とか言われる寂れた商店街ではない。地域に根付いた活気ある商店街だった。
店主たちは皆仲が良く。家族も同然という付き合いをしていた。ギリギリアウトでアーケード外にある“悟り屋”の面々に対しても、それは同様だった。
当然、左近も皆とは顔馴染みで、こんな風に歩いていると次から次に声が掛かる。
「キツネ寿司を作るから帰りにお寄り、華桜ちゃんと食べな」
「もみじ鯛が入れ食いでさ、華桜ちゃん好きだろ、寄れよ」
そして、左近には先の件に加え、もう一つ信じられない現実があった。
それがこれだ。
商店街の住人は一部人外もいるが、たいてい生粋の人間だった。
なのに華桜はどのモノからも好かれ、絶大な人気を誇っているのだ。
あの毒舌横暴女のどこにそんな魅力が? 絶対にみんな騙されていると左近は日々密かに、その魅力とやらを探っているのだが……。
なにぶんにも黒い色眼鏡で華桜を見ているせいか、今のところサッパリ分からず仕舞いだった。
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