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更にボンと身体中を赤面させた左近は、このままここにいたら燃えカスになってしまうと立ち上がる。
「――陶芸教室があるっす、夕飯を早めに作るっす。買い物に行ってくるっす」
棒読みで言うと上着を羽織り財布とエコバッグを持ち、外に飛び出した。
「ウワッ、寒いっす!」
木枯らしが吹く外気は、一気に左近の体温を奪い火照った頬を急激に冷ます。
「――でも、気持ちいいっす」
うーんと伸びをして深く息を吸い込むと、冷えた空気がツンと鼻の奥を刺激する。
まるでミントキャンディを頬張って、冷たい水を飲んだ時みたいだと鼻の下を擦り、痛いほどの冷気を全身に受けながら、左近は商店街を行く。
「今夜は……」と呟き、外出をするから手早くできる丼物にしようと左近は考える。
そうだ! この間看板で見た温泉卵の乗った牛丼にしよう。それに豚汁と山盛りの大根サラダをつけて……サラダにはたっぷりの鰹節をかけて、それにドレッシングはやっぱり和風だなと左近はメニューを組み立てる。
そして、流れるクリスマスソングを聴きながら、まずゲンさんに足を向ける。
「よっ、左近、今日は何だ?」
「牛丼用の肉と卵、それと豚汁用の肉っす」
「了解! 左近も今夜、行くんだってな、湯呑み作り」
元治は秤に牛肉を乗せながら訊く。
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