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「ちょっと……何?」
「淋しくないのかなって、思ったっす」
今までそんなこと考えたこともなかったのに……左近自身、そんな事を訊ねた自分に驚いていた。
「あっ、いや、いいっす」
「本当に変わったわね……花梨ちゃんのお陰かしら?」
モモエがクスクス笑う。
「かっ花梨は関係ないっす」
「関係ないって何のこと?」
「ヘッ!」
突然の声に左近は間抜けな声を上げる。
「あら、花梨ちゃん。こんにちは。茶太郎とお散歩?」
クックッと笑いを噛み締めながらモモエが訊ねる。
「はい。それとおつかいです。お爺ちゃんが食後にリンゴが食べたいって。三個下さい」
「あいよ」と返事をしながらモモエは千蔵の思いを悟る。
そうやってできるだけ花梨を外に出そうとしているのだなと。
「とっておきのリンゴを選んであげるからね」
「よろしくお願いします」
花梨の声がいつも以上に明るい。
「左近ちゃん、今夜楽しみだね」
なるほど、とモモエは思う。
今夜のお出掛けが相当嬉しいんだな、とモモエを笑みを零す。
「花梨はジイちゃんたちと行くっすか?」
「うん。元治さんの車で行くって言ってたよ」
「私も一緒だよ」
両手に大きなリンゴを持ったモモエも答える。
「左近ちゃんは華桜さんと行くの?」
そう言えばどうやって行くんだろう?
首を捻る左近にモモエが「あらっ」と驚いたように言う。
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