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「ウワッ!」
T字路になった横道から、突然眩しい光が飛び出してきたのだ。
普段の元治なら、咄嗟にハンドルを切りブレーキを掛けていただろう。だが、今日の元治は疲れ切っていた。判断を怠った脳はブレーキを掛けることなくハンドルを川に向かって切ってしまった。
それは本当に一瞬の出来事だった。
あれっ? あれは紗希子さん? 左近は目の端に、目を大きく見開き、何か叫んでいる沙希子の姿を見たような気がした。
だが、そこまでだった。プツリと映像は途切れ、左近は意識を失った。
ここはどこだろう? 乳白色の深い霧の中で左近は目を覚ました。
ズキンと後頭部に痛みが走る。
クソッ、何があったんだ?
確か元治さんの車で……そこまで思い出し、アッと辺りを見回す。
他の皆んなは? 花梨はどこだ!
「左近、目覚めるのが遅い!」
「えっ? 華桜さん!」
霧の向こうから華桜の姿が現れる。
「華桜ちゃん、しょうがないでしょう。衝撃が強かったんだから」
「モモエさん!」
続いてモモエが現れる。
「いったいどうしたっすか?」
「事故っちゃたんだよ」
モモエが答える。
「人間は柔よのう」
「えっ、他の皆は? 花梨は!」
フーンと華桜が意味深に口角を上げる。
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