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「栗拾いっすか?」
掃除用具を片付けると手を洗い、リビングを覗き見る。
「なるほどテレビかぁ」
華桜が画面を食い入るように見ている。
女性レポーターが今まさに焼き栗を頬張ろうとしているとこだ。
これに感化されてというところかとうんざりした顔でフルフルと首を振っていると、いきなり華桜が哮る。
「白夜、此奴は馬鹿か? 今すぐと言ったら八百桃だろう! 違うか?」
イヤイヤ、前にもこんな会話をして……あの時は苺狩りのお供をさせられたぞ、と左近は心の中で反論する。
「栗はイガイガが痛いだろうが!」
――やっぱり一応は考えていたんじゃないか!
ヤレヤレと左近は肩を竦め、従順に答え訊く。
「茹で栗でいいっすか?」
すぐに食べたいのならそれが一番早い。
「とりあえず、それ」
華桜の態度が一瞬にして変わる。
まるで子供だなと左近は嬉々とする華桜に小さく溜息を吐く。
華桜は左近の反応などお構いなしに、「それから」と何を想像したのか、ゴクリと喉を鳴らす。
「マロングラッセと渋皮煮もだ。両方ブランデーとラム酒をシッカリ効かせた大人の味に仕上げてくれ……たまえ」
一般に女性は芋栗南瓜が大好物と言うが、華桜も類に漏れずだ。
この前作った大学芋は彼女一人が平らげた。
しかし、この表情……照れている? お願いしている? よほど栗が食べたいのだな、と悟るが“たまえ”って……丁寧にお願いしたつもりだろうか? 分かり難い人だ。
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