01) 狐の初恋

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あっ、そうか! これが俗に言うツンデレというやつだな? 左近は華桜の妙な態度に込み上げる笑いを堪え、ポーカーフェイスを保ったまま了解するとついでに訊ねる。 「で、昼飯は何がいいっすか」 返事は決まっている。 「そんなの自分で考えろ。何のために頭が付いているのだ!」 案の定だった。だが、もしこの質問をしなければ、「アレが食べたかったのに」と別の文句を言われるのは分かっている。 本当に面倒臭い人だと思いながらも「了解っす。考えるっす」と返事をする。 そんな二人を温かな目で見ていた白夜がクニクニと顔を拭う。途端に「嘘だ!」と華桜が悲痛な叫びを上げる。 「やっと秋雨前線が遠ざかったのに、また雨か!」 天窓に視線を向け、灰色の空が目に入った途端、華桜はチッと舌打ちして吐き捨てる。 「これじゃあ月が出ないじゃないか!」 月が出ないと白夜は人型になれない。 華桜がブーッと頬を膨らませプリプリし始める。 うわぁ、また華桜さんが荒れるぞ。 益々厄介だと思いながらも、どうせ機嫌が悪いのならついでだにとずっと不思議に思っていたことを訊いてみるかとフト思う。 それは……どうして白夜が人型ではなく猫なのかだということだ。 人ならざるモノのうち三パーセントしか人型に成れないことは左近もよく知っている。何が基準なのか誰も知らないことも知っていた。 だが、それが何であっても、華桜よりも白夜の方がはるかに人間に相応しいと左近は思っているが……現実は違う。 だから、白夜が人間にならない理由があるのではないだろうかと思ったしだいだ。 「――質問いいっすか?」 意を決し左近が小さく手を挙げる。
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