01) 狐の初恋

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『さあ、新たな時代の幕開けだ! 弟神使よ、外に出るが良い!』 とても勝手な言い草だった。 『そして、稲荷神様の食いぶちを減らさぬよう、己の分は己自身で賄うのだ! 働かざる者食うべからずだ』 しかぢ、左近はいつものように、まぁいいか、と兄神使の言葉に従った。 『なに、神社のことは心配しなくても良い。我がしっかり守る』 で、兄神使の分はどうするのだろうと思ったが、左近の心配は無用というものだった。 “悟り屋”の紹介分として、働いた半分は兄神使の取り分となっていたからだ。 ちゃっかり屋の兄神使に、左近は苦笑いを浮かべるだけで、また、まぁいいか、と“悟り屋”で働き始めた。 「外の世界は思った以上に大変っすけど、思った以上に楽しいっす」 左近の笑顔に白夜が微笑み返す。見つめ合う二人を見た華桜はムッとしながら、「それで初恋の話は!」と先を(うなが)す。 「ああ、それでですね、ここに初めて面接に来た日、帰り道で会ったんすよ。天使に」 その日を思い出すように遠い目で宙を見上げ、左近が言う。
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