01) 狐の初恋

16/41
480人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「天使も穴を通って来ているのか? どこの子だ」 天使は天使だろう、どこの子もそこの子もないのではと左近は心の中でツッコム。 「違うっす。本物のエンジェルじゃなく、天使みたいな人間の()っす」 「なんだ、紛らわしい!」 フンと口をへの字にして、ちょっと考えると華桜はおもむろに訊ねる。 「で、その天使とやらと我、どちらが可愛い?」 ここで言葉を間違えるととんでもない事態になる。それを左近はよく知っている。 「えっと可愛いのは天使みたいな女の子っすが……」 「何!」と華桜の瞳が鋭く光り、左近を睨み付ける。 ヒーッ、怖い! 左近は身を縮めながら言葉を続ける。 「でっでも、美しい……綺麗なのは華桜さんっす」 華桜はすぐさま、当然だ、と言うように軽く頷く。 口角が少し上がっているのに気付いた左近は、どうやら言葉を誤らなかったようだとホッとする。 「で、その可愛い天使とやらはどこの娘だ」 明らかに嫌味混じりの声が訊く。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!