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「さあ、その時に一度だけ会っただけっすから……どこの子だったんすかねぇ」
その返答に華桜が目くじらを立てる。
「白夜、やっぱり此奴、馬鹿だ」
なぜこのタイミングで罵られるのだ、と左近は釈然としない面持ちで訊ねる。
「知ってどうしろと? 人の子っすよ。思い続けても無駄じゃないっすかぁ」
華桜が深い溜息を付き、憐れな子を見るように左近を見る。そして、しみじみと言う。
「白夜、此奴、究極のアホーだったのだな」
白魚のような華桜の手が白夜の滑らかな背中を撫で、愛おしげに白夜を見る。
その目が再び左近を見る。が、その瞳は先の微塵の色もなく、嘲罵のみ色濃く漂っている。
「弟神使、よく聞け。其方のそれは恋でもなんでもない。子犬や子猫を可愛いと思うのと同じだ、勘違いするな」
フンと鼻息荒く、「やっぱり、花より団子だったな」と付け足す。
「エーッ、でも俺、初めてだったっすよ、異性を可愛いって思ったの。なら」
ウーンと唸ると「恋ってどんなんすか?」と左近は不貞腐れながら訊ねる。
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