01) 狐の初恋

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「さあ、その時に一度だけ会っただけっすから……どこの子だったんすかねぇ」 その返答に華桜が目くじらを立てる。 「白夜、やっぱり此奴(こやつ)、馬鹿だ」 なぜこのタイミングで罵られるのだ、と左近は釈然としない面持ちで訊ねる。 「知ってどうしろと? 人の子っすよ。思い続けても無駄じゃないっすかぁ」 華桜が深い溜息を付き、(あわれ)れな子を見るように左近を見る。そして、しみじみと言う。 「白夜、此奴、究極のアホーだったのだな」 白魚(しらうお)のような華桜の手が白夜の滑らかな背中を撫で、愛おしげに白夜を見る。 その目が再び左近を見る。が、その瞳は先の微塵(みじん)の色もなく、嘲罵(ちょうば)のみ色濃く漂っている。 「弟神使、よく聞け。其方のそれは恋でもなんでもない。子犬や子猫を可愛いと思うのと同じだ、勘違いするな」 フンと鼻息荒く、「やっぱり、花より団子だったな」と付け足す。 「エーッ、でも俺、初めてだったっすよ、異性を可愛いって思ったの。なら」 ウーンと唸ると「恋ってどんなんすか?」と左近は不貞腐れながら訊ねる。
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