01) 狐の初恋

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「それに、何ていうのかなぁ、華桜ちゃんには(みょう)に人を惹き付ける力があるっていうか……」 三郎は宙を見つめ、少し考え、「そうだそうだ」と手を打つ。 「花見が嫌いな人間はおそらくいない。だろ? 桜の花に魅了されて群がる花見客みたいなもんだな、華桜ちゃんファンは」 益々といっていいほどよく分からない説明だ。左近の頭の中をクエスチョンマークが飛び回る。 でも、三郎は自分の説明にいたく感銘したようだ、「俺っていいこと言うなぁ」と自分で自分を褒め称える。そして、「おっ、そうだ」と伝言を頼まれる。 「明日のランチミーティング、お忘れなくって華桜ちゃんに言っといてくれ」 商店街の店主ミーティングのことだなと左近は頷き、「了解っす」と返事をして魚三を後にする。 次に向かったのは『肉屋のゲンさん』だ。 「おやおや、左近ちゃん、いらっしゃい」 「あっ、(すず)バアちゃん! 退院したっすか?」 「左近、お前からも言ってやってくれ、奥に引っ込んでろって」 ゲンさんの三代目、元治(げんじ)が母親の鈴を労わるような目で見る。 口は悪いが元治は商店街でも有名な親孝行息子だ。 「嫌だね。何度も言ってるだろう、私は店にいる方が元気になれるって」
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