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「それに、何ていうのかなぁ、華桜ちゃんには妙に人を惹き付ける力があるっていうか……」
三郎は宙を見つめ、少し考え、「そうだそうだ」と手を打つ。
「花見が嫌いな人間はおそらくいない。だろ? 桜の花に魅了されて群がる花見客みたいなもんだな、華桜ちゃんファンは」
益々といっていいほどよく分からない説明だ。左近の頭の中をクエスチョンマークが飛び回る。
でも、三郎は自分の説明にいたく感銘したようだ、「俺っていいこと言うなぁ」と自分で自分を褒め称える。そして、「おっ、そうだ」と伝言を頼まれる。
「明日のランチミーティング、お忘れなくって華桜ちゃんに言っといてくれ」
商店街の店主ミーティングのことだなと左近は頷き、「了解っす」と返事をして魚三を後にする。
次に向かったのは『肉屋のゲンさん』だ。
「おやおや、左近ちゃん、いらっしゃい」
「あっ、鈴バアちゃん! 退院したっすか?」
「左近、お前からも言ってやってくれ、奥に引っ込んでろって」
ゲンさんの三代目、元治が母親の鈴を労わるような目で見る。
口は悪いが元治は商店街でも有名な親孝行息子だ。
「嫌だね。何度も言ってるだろう、私は店にいる方が元気になれるって」
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