01) 狐の初恋

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 *** 「はぁぁぁ、やっぱり美味かったっす!」 パフェを食べ終えた左近は甘い吐息を吐き出し、チラリと鈴の手元を見る。ロングスプーンを握る手がプルプルと震えている。 こんな軽いものでさえ、持ち上げるのが辛いのだろう。 「左近ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとうね」 鈴の前に置かれたパフェは、まだ四分の一も減っていなかった。抹茶とバニラのアイスが溶け合いマーブル状になっている。 ――あれだけ食べるのが好きだったのに……。 『バアちゃんの胃は底無しだぁ』と笑い合った去年を懐古した左近は、喉の奥がぐっと詰まるのを感じて慌てて水を飲む。 そんな左近に鈴がいきなり爆弾が投下した。 「左近ちゃんは人間じゃなくお狐様だったんだね」 突然、前振りも無しに、鈴は世間話でもするように言った。 ――今、何て? 飲もうと傾けたグラスから水が滴り落ちる。 ――お狐様と言ったか? 口元にグラスを付けたまま、左近は瞳を見開く。 「おやおや、何を零してるんだい。赤ちゃんみたいに」 「エッ、アッ、鈴バアちゃん……人間じゃなかったっすか!」 言葉と共にダンとウォーターグラスを乱暴に置くと、ピチャンと水が跳ね、テーブルと左近の手を濡らすが左近は全く気付かない。 それどころか、アワアワと気持ちが疾走し、話を有耶無耶(うやむや)にするどころか、墓穴を掘ったことさえ気付いていなかった。
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