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「はぁぁぁ、やっぱり美味かったっす!」
パフェを食べ終えた左近は甘い吐息を吐き出し、チラリと鈴の手元を見る。ロングスプーンを握る手がプルプルと震えている。
こんな軽いものでさえ、持ち上げるのが辛いのだろう。
「左近ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとうね」
鈴の前に置かれたパフェは、まだ四分の一も減っていなかった。抹茶とバニラのアイスが溶け合いマーブル状になっている。
――あれだけ食べるのが好きだったのに……。
『バアちゃんの胃は底無しだぁ』と笑い合った去年を懐古した左近は、喉の奥がぐっと詰まるのを感じて慌てて水を飲む。
そんな左近に鈴がいきなり爆弾が投下した。
「左近ちゃんは人間じゃなくお狐様だったんだね」
突然、前振りも無しに、鈴は世間話でもするように言った。
――今、何て?
飲もうと傾けたグラスから水が滴り落ちる。
――お狐様と言ったか?
口元にグラスを付けたまま、左近は瞳を見開く。
「おやおや、何を零してるんだい。赤ちゃんみたいに」
「エッ、アッ、鈴バアちゃん……人間じゃなかったっすか!」
言葉と共にダンとウォーターグラスを乱暴に置くと、ピチャンと水が跳ね、テーブルと左近の手を濡らすが左近は全く気付かない。
それどころか、アワアワと気持ちが疾走し、話を有耶無耶にするどころか、墓穴を掘ったことさえ気付いていなかった。
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