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「あ、橘さん。こんばんは」
「おう、汀」
「ここで何してるんですか?もしかして、また兄に手を――」
「出したよ。最後だからな」
「え、最後?」
「お前の望みどおり、瀬戸と別れてやった。これで満足だろ?」
俺は汀の横を通って、玄関へと向かう。
「え・・・ちょ、橘さん!」
「じゃあな。もう会うこともねーけど」
「本当に!?ちょ、待って――」
汀の言葉をさえぎって、ドアを閉める。
これでいい。
これでいいんだ。
『いや、嫌だ!離せ!橘!』
瀬戸・・・
『今の橘は・・・俺の好きな橘じゃない』
『橘が俺を意識してくれているから、俺はどんなことでも・・・受け入れられる』
あいつとの思い出が、
頭の中を巡る。
『なんでキス・・・してくれないんだよ!』
『あの子が、橘のこと・・・名前で呼んだ。橘とキスした。橘と、橘と・・・
そう思ったら、あの子が嫌で、ムカついて、でも羨ましくて・・・』
瀬戸・・・っ
『た、ちばなぁ・・・はぁ、好き、だ。橘が、好き・・・』
「う、く・・・っ、あああああ」
『どこまでも・・・・・・一緒に、堕ちよう』
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