3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
波長
小学生の頃、いつもツルんでいる同級生がいたんだよ。
ふだんは無口なんだけど、授業中にとつぜん奇声を上げたり、ものを壊したりするもんでみんな気味悪がっていた。
なんでも自分に憑いた女の悪霊のせいだって。特に気持ち悪いのは「キシシっ」て嗤うとき。涎を垂らして、白目をむくの。
そんなやつと仲良くなったのは、日頃は気のいいやつだったってのと……ま、波長が合ったんだろうね。
ある日のこと、そいつと『シャッターくぐり』をすることになったの。
ほら。アクション映画の主人公が、天井の下りてくるトラップを、ギリギリですり抜けたりするじゃない。その真似事。家の車庫に、電気制御で開閉するシャッターがあったんだけど、それを罠に見立ててさ。
想像つくと思うけど、次第にエスカレートしてきて、最終的に腕力でシャッターを止めるって話に。俺もバカなもんで、肘から先をつっかえ棒にしたら……なんて思ったの。
うん。がっちりシャッターと地面のあいだに腕を挟まれちゃった。
すぐにヤバいって思って、助けをもとめた。でもなぜか友達はニヤニヤしたまま。
焦ったよ。お構いなしにシャッターは腕を締めつけてくる。俺は必死にもがいて、力任せに腕を引き抜いた。ほんと骨折する寸前だよ。
なにしてんだ!
俺は怒って、肘から血を流したまま友達に詰め寄る。
でも変なんだ。
友達は謝りもしない。ニヤけたツラのまま、内緒話でもするみたいに口元に手を添えるの。
そこで俺は失敗した。
嫌な予感を感じつつ、なんだよ、っていいながら耳を近づけちまった。
次の瞬間、
――キシシっ!
歯軋りみたいな嗤い声が響いた。寄せた耳と、逆から。
そしてこんな声が聞こえた。
『あんたにする』
最初のコメントを投稿しよう!