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程なくして妻から妊娠した事を知らされた。
妻は嬉しそうに、お腹を擦りながら言った。
「あのね、頭にフッと浮かんだの。女の子ならアユミって名前がいいかなって」
その妻の言葉に、俺は昔つき纏われていた亜由美というストーカー女のことを思い出した。
亜由美はいつも、口癖のように言っていた。
『--貴方とひとつ屋根の下で暮らしたいな』
『--貴方と幸せな家庭を築きたいわ』
そしてそれは叶う事なく、亜由美は交通事故で亡くなった。
おそらくあの足跡は、亜由美がつけたものだったのだろう。
亜由美は昔俺にしたように、妻をつけ狙い続け、その体にもうひとつの命が宿るのを待っていたのだ。
俺と、家族になりたいがために。
もう数ヶ月すれば、亜由美の魂が宿った子供が産まれてくる……。
了
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