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「帰りに、お前の教室に寄った。そしたら、何か、クラスの奴らとギャーギャー騒いでて、マンガだかグラビア雑誌だか知らないけど、何かそんなの見てただろ。“この、○○ちゃんのちっせぇ水着、たまんねぇなぁ”とかってサクが言ってて」 「あぁ。言ってた言ってた。あいつ、本当にアホ丸出しだよな」 「……お前だって、何か言ってたじゃん」  二人しかいないエレベーターの中で、隣に立っているアサヒが何かに気付いたような顔をしてこっちを見たのが視界に入って、反射的に顔を背けた。 「お、まえ。もしかしてそれで怒ってんの? 俺が水着の女のコのグラビア見てギャーギャー言ってたから? それで先に帰っちゃったの?」  その時ちょうど八階に着いて扉が開き、僕らは箱の中から解放された。たぶん、ひどい顔をしている。赤くなってるかもしれない。それを見られるのがイヤで、アサヒの家の玄関を目指し、彼よりも先に速足で歩いた。 「おーい、鍵持ってんの、俺!」  わかってるよ、そんなこと。 心なしか、アサヒの声に含み笑いが混じっている。玄関の前で追いつかれて、カギをガチャガチャやってアサヒが扉を開けて、「どーぞ」と先に入れてくれる。 「……どーも」 「どーもじゃねぇよ」  そう言いながらアサヒは玄関の扉を閉めると、こらえていたものを吐きだすように、天井を向いて大声で笑い始めた。  バカだなぁ、僕。どうしようもなくバカ。だって、僕のやきもちをこんなふうに笑い飛ばす男のことが好きでしょうがないんだもんな。 「あ、アサヒも、ああいうのに載ってる女が好きなのか? あの、水着の……」 「……え?」 「男だもんな。……僕もそうだけど」  ふっと笑って靴を脱いで、僕の頭をポンと叩いて先にリビングへ向かうアサヒの後ろを歩きながら、ゆるくウェーブがかかった髪を眺めていた。ヤツが何をどう言い返してくるのか、聞きたいような聞きたくないような。ていうか、僕がさっき言ったことって、冷静に考えるまでもなく、カッコ悪いな。
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