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リビングのソファの足元にカバンをどさっと置くと、こっちを見ながらアサヒが言った。
「ガリ勉で成績優秀で、絵に描いたような運動オンチで。クソにがいコーヒーはガバガバ飲んでるくせに、コーラを飲むといつもオエッてムセる。賢いくせにやきもち焼きで、けどお前のそんなガキみたいなところを知ってるの、俺だけでしょ」
そうして、ふわぁーっだか何だか言って大あくびしながらソファに体を沈めると、自分の隣をポンポンと叩く。ここに座れ、というように。僕は、彼がそうしたように持っていたカバンを足元に置いて、アサヒの隣に座った。
「お前さァ、めちゃめちゃ頭イイのに、そうゆうところはバカだよな」
ばーか。とアサヒはもう一度言って僕の髪をもしゃもしゃにかきむしると、グイッと自分のほうへ引き寄せた。まだ制服を着たままの彼の身体は、汗の匂いと体温の熱さがまざって、生々しい温もりがあった。
「踏切の近くの公園に桜が咲きかけてたの、気づいた?」
僕だけに聞こえるような声で、彼が言う。
「もう春だなぁって、これトモと一緒に観れたらラッキーだったのになぁって。なんでお前、先に帰っちゃったのかなぁって考えながら、歩いてたの」
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