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「俺の考えてること、教えてやろうか」
「な、なんだよ」
「俺が、おまえにしたいと思ってること」
また一歩男が詰め寄り、青年は強張った表情であとずさる。
「おまえが毎晩、俺の頭ん中でどんなことされてるか」
「や……め、ろ」
青年は壁際に追いやられ、男から顔を背けるように俯く。
男は青年の右側の壁上部に手をつき、覆い被さるようにして青年の耳元に何かを吹き込んだ。 青年の肩が小さく跳ね、ぶるりと身体を震わせる。男はさらに身体を密着させ、いたぶるような目で青年を追い詰めてゆく。
どんな卑猥なことを囁かれているのか、青年の顔はみるみるうちに真っ赤に染まり、目が鮮やかに潤み出す。それは息を呑むほどの艶めかしさだった。
そして男が素早く青年の太腿から尻までを撫で上げると、青年はハァ…っと熱い息を洩らし、すがるように男のシャツにしがみついた。
それからたまらない様子でぎゅっと目をつぶり、せわしなく肩で息をする。
まるで濃厚な情事を覗き見たようないたたまれなさに、私の中の水の温度が一気に上昇した気がした。
「俺とつきあうってことは、それくらいの覚悟が必要だってことだ」
男は傲慢に言い放つと青年を解放し、新たな煙草に「自分のライター」で火を点けた。
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