第1章 剣戟の城

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空から自分の遺体を眺めるのは変な気分だ。 伸びた黒髪は丁寧に撫でつけられ、頬には白粉、唇には紅がさしてある。 『幽体?』とでも言えばいいのだろうか? 背中のほくろの数が分かったし、身長150センチで見える景色と、空中浮遊しながら見える景色の違いも分かり、中々に面白い。 祖父母や両親もがんで他界しているので、玉森神社はいとこの美雪(みゆき)が継ぐことになった。彼女は私より年上で、しかもゲームの趣味を持っているから適任だ。 私の家系はがんになりやすいようで、何となく身体がだるいなぁと受診したら、すい臓がんが胃や肺に転移していて、手の施しようのない状態だった。 そのままターミナルケアに直行。 医師が「好きな事をやらせてあげなさい」とおっしゃったので、死ぬまでゲーム三昧をした。栄養は中心静脈に針を刺して供給されるし、トイレはチューブを挿入されたので行く必要も無い。 薬のお蔭で痛みはほとんど感じなかったので、病室にパソコンを持ち込んで一日20時間位ネットゲームに明け暮れた。 通夜祭の会場は、大学の友人、地元のおじいちゃん、おばあちゃん、理子ファンのゲームオタクというカオスな顔ぶれだ。昔は蘇りもあったらしいが、流石に現代医学の発達した世界では、そういうハプニングは起こらない。
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